成績の差のほとんどは偶然の範囲です。選手批判の根拠にはなりません。

コラム 戦術

Mリーグファンのための鳴き読み講座

鳴き読みの法則を全部覚えるのは無理があります。Mリーグの牌譜で確かめた結果から、細かく読む相手の絞り方と、覚えるのを最後の手出しの位置とチー出しかどうかに減らす方法をまとめました。

鳴いている相手の待ちを、捨て牌と鳴きの形から読む「鳴き読み」。語られている法則は多いのですが、人の記憶力には限りがあります。対局中に全員の手出しとツモ切りを覚え、法則を一つずつ当てはめるのは、現実的ではありません。

このサイトでは、全員の手牌が残っているMリーグの牌譜で、よく語られる鳴き読みの法則がどこまで当たるかを確かめました(Mリーグでの鳴き読みはどこまで当たるのか?)。この記事では、その結果から、覚える量をできるだけ減らした鳴き読みを提案します。

結論:注意を向ける相手を絞り、覚えるのは「最後の手出し」だけにする

  1. 細かく読む相手を決める:捨て牌の段数+副露数が3以上の人。何人も鳴いていたら、1人だけに注意を固定しない。
  2. 覚えるのは、その人の最後の手出しの位置と、それがチー出しだったか:牌の種類は河を見れば分かります。
  3. あとは卓の上を見る:鳴いた色や、以前に切った牌は、覚えなくても見えています。

以下、順に説明します。数字の「当たる割合」は、その牌をいま切ったとしたら、その鳴いている人の役のある待ちに当たっていた割合です(ドラは役に数えません)。

1. 誰を細かく読むか

鳴いている人が何人かいても、全員を同じ細かさで読む必要はありません。まず、その人の手がどれくらい危ないかで、細かく読む相手を決めます。

使うのは「捨て牌の段数+副露数」という1つの数字です。段数も副露数も卓の上に見えているので、覚える必要はありません。鳴いている人が牌を切った直後の場面で、その人の現物でない牌を1枚切ったとしたときに払う平均の点数(1枚あたりの支払点)を、この合計ごとに比べました。

段数+副露数例 1枚あたりの支払点役のある聴牌場面の割合
2 1段目で1副露 17点 8% 18%
3 1段目で2副露、2段目で1副露 93点 32% 36%
4 2段目で2副露、3段目以降で1副露 179点 48% 34%
5 3段目以降で2副露、2段目で3副露 320点 67% 11%
6 3段目以降で3副露 452点 87% 2%

(3段目以降は3段目とまとめ、副露は3副露以上を3として数えています。)

合計が大きいほど、平均の支払点は高くなっていました。この集計で計算した仮想的な支払点の約98%は、合計3以上の場面に集中しています(そこだけ見れば放銃の損失の98%を防げる、という意味ではありません)。

何人も鳴いているときは、1人に注意を固定しない

同じ巡目に2人以上が鳴いていることは珍しくありません。合計の大きい人ほど危ない傾向はありますが、合計が同じ人が並ぶことも多く、合計だけで「いちばん危ない1人」を決めることはできませんでした。何人も鳴いているときは、1人だけに注意を固定しないでください。

同じ合計なら、ポンから鳴いている人のほうが平均では危なかった

合計が4以上のときは、最初の鳴きがポンだった人のほうが、チーだった人より、平均の支払点が高い集計結果でした(合計4で49点、合計5で102点高い)。役牌のポンのように、役と打点が最初から見えている鳴きが多いためと考えられます。

ただし、同じ合計でも内訳によって差は大きく違いました(合計4でも、1段目で3副露なら差はほとんどなく、3段目以降で1副露なら66点ほど)。鳴いた牌や見えている打点を優先し、ポン始まりというだけで相手の優先順位を決めないでください。

相手が誰か(ふだんよく鳴く人かどうか)は、後回しでかまいません。通算の副露率が低い人の鳴きは、段数と副露数をそろえても聴牌率が2ポイントほど高いだけでした。

2. 覚えるのは「最後の手出しの位置」と「チー出しかどうか」

細かく読む相手を決めたら、その人が最後に手出ししたのはどこかと、それがチーの直後の打牌(チー出し)だったかを覚えます。牌の種類は、その人の河を見れば分かります。これで、元の記事で確かめた中でも手がかりの大きい読みが2つ使えます。

チー出しの周りは少し危ない

チーした直後の打牌は、ツモがないので必ず手出しです。そのため、チーの後に次の手出しが入るまでは、最後の手出しがチー出しです。

チーの直後の場面で、チー出しの周りは、同じ場面のほかの牌より当たりやすく、割合にして1.5倍前後でした。

チー出しから見て当たる割合ほかの牌
1つ隣 4.87% 3.16%
マタギ 4.96% 3.33%
2つ隣 4.64% 3.26%

3つとも同じくらいなので、区別しなくてかまいません。チー出しが5なら、3・4・6・7のあたりをまとめて「少し危ない」と見ておきます。

ただし、この数字はチーの直後の場面のものです。その後、ツモ切りが続く間も同じだけ危ないかは確かめていません。ポンや槓が入れば、手の形も変わります。

ポンの直後の打牌の周りには、こうした上乗せは見られませんでした。周りを警戒するのはチー出しだけです。

その後に上家が切ってチーされなかった牌は、ほぼ当たらない

最後の手出しより後に、その人の上家が切って、チーされなかった数牌は、その時点で切って当たったのが0.05%でした。同じ場面のほかの数牌(5.13%)の100分の1ほどで、元の記事で確かめた読みの中でいちばん強い手がかりです。

この読みを使うには、上家の河のどこまでが「最後の手出し」より前かを知っている必要があります。河に時間の印はないので、最後の手出しの位置を、上家の河との前後関係で覚えておきます。自分がその人の上家なら、自分の河で確かめればよいので楽です。前後関係が分からなくなったら、この読みは使わないでください。

その人がまた手出しをしたら、形が変わった可能性があるので、覚える位置を入れ替えます。なお、合計3になってから見始めた場合、それより前の手出しの情報は後から取り戻せません。

3. 見れば分かることは覚えない

次の2つは、卓の上を見れば分かるので、覚えておく必要はありません。

覚える優先度を下げてよい法則

次の法則は、元の記事の比較では明確な差を確認できませんでした。この記事の簡略版では、覚える優先度を下げます。無効だと証明したわけではありません。

「形を選べたチーの直後の打牌のスジは通る」は、205回で一度も当たっていませんでした。ただ、めったに起きない形なので、覚える優先度は低めです。

まとめ:牌を切る前の3つの確認

  1. 段数+副露数が3以上の人はいるか。その人を細かく読む。何人もいれば1人に固定しない。合計2の人も、見えている打点には注意する。
  2. その人の最後の手出しはどこで、チー出しだったか。チー出しならその周りを少し警戒し、その後に上家が切ってチーされなかった牌を探す。前後関係が分からなければ、この読みは使わない。
  3. その人の副露と河を見る。2色鳴きなら残りの色を警戒材料にし、以前に切った数牌のマタギは比較的安全と見る。

注意

言葉の意味

手出し:ツモった牌ではなく、手の中の牌を切ること。

チー出し:チーした直後に切った牌。

マタギ:切った牌をまたぐ両面待ち(5を切ったなら3-6と4-7)で当たる牌。

喰い伸ばし:チーした後も、同じ色の近くに両面待ちが残る鳴き方。

段数:捨て牌の列。6枚までが1段目、7〜12枚目が2段目。