コラム 戦術

Mリーグでの鳴き読みはどこまで当たるのか?(日文)

全員の手牌が残るMリーグの牌譜で、よく語られる鳴き読みの法則を、同じ場面の牌どうしで比べました。チーしなかった牌、チー直後の打牌の周り、2色鳴きの残りの1色は差が大きく、「ほぼ通る」とされる法則の多くは明確な差を確認できませんでした。

Mリーグでの鳴き読みはどこまで当たるのか?チーの直後・チーしなかった牌・萬筒索をMリーグの牌譜で検証 | M數據研究所

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Mリーグでの鳴き読みはどこまで当たるのか?

全員の手牌が残るMリーグの牌譜で、よく語られる鳴き読みの法則を、同じ場面の牌どうしで比べました。チーしなかった牌、チー直後の打牌の周り、2色鳴きの残りの1色は差が大きく、「ほぼ通る」とされる法則の多くは明確な差を確認できませんでした。

鳴いている相手の待ちを、捨て牌と鳴きの形から読む「鳴き読み」。よく語られる法則のうち、どれが卓上で頼りになり、どれが頼りにならないのか。全員の手牌が残っているMリーグの牌譜で確かめました。

鳴いている人が牌を切った直後の14万6千場面について、その人の現物以外の数牌ひとつひとつが、その瞬間に切っていたら、その人の役のある待ちに当たっていたかを手牌から判定し、法則に当てはまる牌と当てはまらない牌を比べています。比べるのは同じ場面の中の牌どうしで、巡目・副露数・点数状況・誰が鳴いたかといった場面の条件は、最初からそろっています。

割合は「その牌をいま切ったとしたら、今回の判定条件で、その鳴いている人の役のある待ちに当たっていた割合」です(ドラは役に数えません)。実際に切られた牌の放銃率とは違い、切ったかどうかに関係なく、牌の種類ごとに1回と数えています。ほかの人への放銃は含みません。どの牌が相対的に危ないかを比べるための数字です。

結論

  • 当たりにくかった:チーされなかった牌。同じ場面のほかの牌の100分の1ほどしか、その鳴いている人の待ちに当たっていませんでした。
  • 当たりやすかった:チーの直後に切られた牌の周り(マタギ・1つ隣・2つ隣)と、2色を鳴いている人に対する残りの1色。1枚切ったときの支払点で見ても、はっきり高くなっていました。
  • ポンの直後は別物:ポンの直後の打牌の周りには、チーの直後のような上乗せは確認できませんでした。
  • 過信しない:「チー出しが字牌なら喰い伸ばしはない」「先に字牌を手出ししてからの両面チーは、マタギ以外ほぼ通る」は、今回の比較では明確な差を確認できませんでした。

一覧

表の割合は、その牌をいま切ったとしたら、鳴いている人の役のある待ちに当たっていた割合です。

読み該当牌ほかの牌差(90%区間)補正後 1枚あたり支払点の差
チーしなかった牌(上家が切った牌、その人の最後の手出し以降) 0.05% 5.13% −5.26(−5.44〜−5.11)有意 −267点
チーの直後に切った牌の1つ隣 4.87% 3.16% +1.67(+1.36〜+1.99)有意 +74点
同じくマタギ 4.96% 3.33% +1.53(+1.19〜+1.88)有意 +63点
同じく2つ隣 4.64% 3.26% +1.38(+1.01〜+1.72)有意 +54点
ポンの直後に切った牌の1つ隣 1.84% 2.19% −0.53(−0.69〜−0.34)有意 +1点(確認できず)
同じくマタギ 2.19% 2.23% −0.32(−0.49〜−0.14)確認できず +6点(確認できず)
同じく2つ隣 2.40% 2.11% +0.15(−0.05〜+0.35)確認できず +22点(確認できず)
2色を鳴いている人に対する、残りの1色 6.49% 3.77% +2.81(+2.29〜+3.37)有意 +123点
以前に切った牌のマタギ(数牌を切った直後) 2.66% 3.58% −1.95(−2.05〜−1.85)有意 −109点
同じく(字牌を手出しした直後) 1.05% 1.87% −1.18(−1.27〜−1.08)有意 −69点
形を選べたチーの直後の打牌(1〜3・7〜9)のスジ 0.00%(205回中0) 4.22% −4.50(−5.34〜−3.76)有意(回数は少ない) −185点
チーの直後に字牌を切ったときの、喰い伸ばしの対象牌 2.04% 2.82% −0.86(−1.37〜−0.40)確認できず −18点(確認できず)
同じ牌を間を空けて2回手出ししたときの2つ隣 1.85% 2.22% −0.35(−0.88〜+0.20)確認できず −30点(確認できず)

差は、同じ場面・同じ数字の組(1・9、2・8、3・7、4〜6)の中で比べた差の平均です。「該当牌」「ほかの牌」の割合は、比べた場面での単純な平均なので、差とは少しずれます。「1枚あたり支払点の差」は、その鳴いている人だけを相手に、その牌(赤でない普通の牌として)を1枚切ったときに払う平均の点数(ロンの点数、手牌と副露のドラ・赤ドラ込み、本場なし、当たらなければ0点)の差で、同じ場面の中で比べた値です。ほかの人への放銃や、自分の和了の機会は入っていません。「補正後」と「確認できず」は、当たる割合・当たったときの点数・支払点の48の比較(表にない比較を含む)をまとめて補正(Holm法)したうえで、5%水準で明確な差を確認できたかどうかです。「確認できず」は、差がないことを確かめたという意味ではありません。

チーされなかった牌

上家が切った牌を、鳴いている人がチーしなかった場合、その牌をその時点で切って当たったのは0.05%で、同じ場面のほかの数牌(5.13%)の100分の1ほどでした。1枚あたりの支払点も、ほかの牌の254点に対して3点でした。条件は、その人が最後に手出しした後に切られた牌であることです。手出しで形が変われば、読み直しになります。

チーされなかったことに加え、ロンされずに局が続いたことも、この低さに関係している可能性があります(それぞれの寄与は分けていません)。また、この数字はその鳴いている人に対するものだけで、ほかの人への危険や、自分の手の価値は入っていません。

チーの直後と、2色鳴きの残りの色

チーの直後に切られた牌の周りは、同じ場面のほかの牌より1.4〜1.7ポイント当たりやすく、割合にして1.5倍前後でした。1つ隣、マタギ、2つ隣のどれも同じくらいです。チーは近くの形を組み替えて鳴くので、切った牌の周りに待ちが残りやすいと考えられます。

2色を鳴いている人に対しては、鳴いていない残りの1色が6.49%と、鳴いた2色(3.77%)より3ポイント近く高くなっていました。1枚あたりの支払点では123点の差で、今回の比較の中でいちばん大きな上乗せでした。「萬子と筒子を鳴いていれば索子」という読みは、場面の条件をそろえても成り立ちます。

「先に安全牌を切っているのに、チーの直後に出てきた牌は待ちに関係している」という読みもあります。チーの直後の打牌の周りが危ないことは確かですが、先に字牌を手出ししていたかどうかで比べると、副露数などで調整した比較では、明確な差を確認できませんでした(−0.67ポイント、区間は0をまたぐ)。

ポンの直後は、チーと同じに扱わない

ポンの直後に切られた牌の周りでは、当たる割合は1つ隣でわずかに低く(−0.5ポイント)、マタギと2つ隣は明確な差を確認できませんでした。1枚あたりの支払点も、1つ隣・マタギ・2つ隣のどれも、明確な差を確認できませんでした。チーの直後のような上乗せは、ポンの直後には見られません。ポンは対子をそのまま使うので、切った牌が待ちの近くに残りやすい理由がないためと考えられます。

以前に切られた牌のマタギ

鳴いている人が以前に切った数牌のマタギは、当たりにくくなっていました。「字牌を手出ししたら、それ以前のマタギは通る」とよく言われますが、数牌を切った直後でも同じように低く(−1.9ポイント)、字牌の手出しがきっかけというわけではありませんでした。

過信しないほうがよい読み

「チーの直後に字牌を切ったら、喰い伸ばしの聴牌はない」は、喰い伸ばしの対象牌が同じ場面のほかの牌より0.9ポイント低いものの、多くの比較をまとめて補正すると明確な差とは言えず、1枚あたりの支払点でも明確な差を確認できませんでした。対象牌でも2%ほどは当たっていて、「通る」と言い切れる水準ではありません。

「先に字牌を手出ししてから両面でチーしたら、打牌のマタギ以外はほぼ通る」は、副露数・鳴いた色の数・巡目で調整した比較では、字牌の手出しが先にあってもなくても明確な差を確認できませんでした(−0.06ポイント、区間は0をまたぐ)。

「対子を間を空けて2枚切ったら、2つ隣とのシャボが危ない」も、今回の判定(同じ牌を間を空けて2回手出し)では、2つ隣が危ないことを確認できませんでした。

「形を選べたチーの直後の打牌のスジ」は、205回で1回も当たっていませんでしたが、めったに起きない形です。

相手の聴牌の近さの目安

読みの前に、相手がどれくらい和了れる聴牌に近いかの目安です。チー・ポンの直後の打牌で、役のある聴牌をしていた割合を、捨て牌の段数と副露数で分けました(副露数には大明槓も含みます)。

捨て牌 1副露 2副露 3副露以上
1段目(6枚まで) 7% 27% 62%
2段目 37% 59% 87%
3段目以降 40% 66% 90%

「段数と副露数の合計が4なら約半分」という目安は、2段目まではほぼそのとおりでした。3段目以降は、形の上では聴牌していても役がない鳴き(流局の聴牌料を取りにいく鳴きなど)が増え、和了れる聴牌は1副露で40%、2副露で66%にとどまります。終盤の鳴きは、形だけ聴牌の可能性を割り引いて見てよさそうです。

1副露目の直後に限ると、和了れる聴牌はチーの後で32%、ポンの後で19%で、ポンのほうがずっと遠い鳴きです。

鳴いた人の通算副露率も少しだけ手がかりになります。副露率の低い人の鳴きは、段数と副露数をそろえても聴牌率が2ポイントほど高く、鳴いて和了したときの平均打点も高めでした(4,982点対4,581点)。ただ、段数と副露数に比べれば小さな差です。


方法と注意

  • 数字は、2018-19シーズンから2026-27シーズン序盤までの全ステージ(レギュラー・セミファイナル・ファイナル)の牌譜から集計しています。
  • 割合は「その牌をいま切ったとしたら、その鳴いている人の役のある待ちに当たっていたか」を、全員の手牌から判定したものです。役と点数は麻雀の点数計算ライブラリで計算し、ドラ以外の役が1つ以上ある待ちだけを数えています(仮に切る牌については、ホーテイや同じ巡目の見逃しなど、場の状況で決まるものは再現していません)。牌の種類ごとに1回と数え、待ちの形(両面・シャボなど)は分けていません。実際に切られた牌の放銃率とは違います。
  • 点数の計算は、鳴いた人が実際にロンで和了った3,929局で、牌譜に記録された点数と比べ、3,928局で一致しました(残る1局は、ロンされた打牌が記録に残っていない局です)。ホーテイ・槍槓、連風牌の雀頭(2符)もMリーグのルールどおりに扱っています。仮に切る牌は、赤でない普通の牌として計算しています。
  • 同じ場面の中で比べられる読みは、場面と数字の組ごとに比べた差をまとめています(Mantel-Haenszel法)。「字牌チー出し」と「数牌チー出し」のように別々の場面を比べる読みは、数字の組・巡目帯・副露数・鳴いた色の数で調整しています。選手や親子、手牌の構成などは調整していないので、こちらの比較は目安です。
  • 区間は、試合を単位に選び直すブートストラップ(1,000回)による90%区間です。「補正後」の判定は、当たる割合・当たったときの点数・支払点の48の比較全体で、Holm法により多重比較を補正しています。数ポイントや数十点の小さな差は、計算の単純化の影響も受けうるので、はっきりした差として読まないでください。
  • 語られている法則の条件は、牌譜から機械的に判定できる形に単純化しています(「安全牌を切った」を字牌の手出しで代用する、など)。今回の定義での結果で、法則そのものを否定するものではありません。

言葉の意味

マタギ:切った牌をまたぐ両面待ち(5を切ったなら3-6と4-7)で当たる牌。

喰い伸ばし:チーした後も、同じ色の近くに両面待ちが残る鳴き方(例:4567から3を45でチーして、残った67で5-8待ち)。

手出し:ツモった牌ではなく、手の中の牌を切ること。

90%区間:データのばらつきから求めた、差のありうる範囲の目安。0をまたいでいれば、差は偶然でも起こりうる大きさです。