計算方法 牌譜 2018-19〜2026-27
計算方法の詳しい解説(日文) このページ は、本サイト が表示 している「実力推定 」「運の指標 」「トップ 確率 」「順位確率 」な どが、どういう計算 から出てきた数字 なのかを、用語集 の短い説明 より一段深 く説明 するものです。
数式 が出てきますが、四則演算 の範囲 で読めるように書いています。また、 それぞれの計算 が何を単純化 しているか(=どこまで信用 してよいか)も 隠さず書きます 。数字 を見るときに気をつけてほしい点は、太字 の段落 と「※」の 注記 にまとめています。
目次 データ の出所 と集計の範囲 「実力推定 」は 平均 に引き戻した値 パーセンタイル と打ち方のタグ 運の指標 運を除いたポイント トップ 確率 とポイントの内訳 局収支 の内訳 順位確率 と進出確率 のシミュレーション 最終順位 の表と確率の推移 この計算 は正しく働いているか この計算の限界と単純化 コラム :なぜ推定値 はこんなに平均に寄るのか 1. データの出所と集計の範囲 元になっているのは、有志 の方が公開 しているM リーグ 牌譜 です。全局 の配牌 ・ツモ ・打牌 ・鳴き・和了 が記録 された牌譜 で、2018-19 から現在 まで1,940半荘 ・23,653局 を、試合 の翌朝 に自動 で取り込み直しています。
試合 のポイント は、牌譜 の点数 からMリーグ のルール どおりに計算しています。
25,000点 持ち30,000点 返し。順位点 は+30 /+10 /−10 /−30 で、トップ にオカ+20。 同点 は公式記録 と同じく同着 (2人 とも上の順位 )と し、順位点 を分け合います。0.1pt で割り切れない端数 は起家 に近い人へ。 終局時 に残った供託 はトップ が受け取る。 トビ なし、西入 なし、途中流局 なし。南4局 の親は 和了 や聴牌 で連荘 を続ける(アガリやめなし)。 今季 の公式成績 と照合 し、ポイント ・局数 ・副露率 ・リーチ 率・和了率 ・放銃率 が一致 することを確認しています。
※ 公式 サイト は率を小数第 2位 で切り捨てて表示 しているため、本サイト の値と見た目が0.01 ずれることがあります。
牌譜 の中には、ドラ 表示牌 やツモ の記録 が欠けている・持っていない牌を捨てているなど、書き起こしの不備 がある局がわずかにあります(23局 )。こうした 局は、局単位 で打ち方と運の指標 から除いています。
※ 不備 のある局でも、点数 の記録 が正しい限り、試合結果 (ポイント )に は含めています。
2. 「実力推定」は 平均に引き戻した値 麻雀 の成績 は実力 と運の両方 で決まります。少ない 試合数 で好成績 の選手 は、実力 が高いのかもしれないし、たまたまツイ ていただけかもしれません。「実力推定 」は 、 この二つを見分 けるために、実績 をリーグ 平均 の方へ引き戻して 見積もった値です。
直感的 には、シーズン 序盤 の打率 ランキング と同じです。開幕 10 打席 で打率 5割の打者 を「5割打者 」と は誰も思いません。試合数 が少ないうちは大きく引き戻し、試合数 が増えるほど実績 に近づけます。
2.1 半分安定する件数 k どれだけ引き戻すかは、指標 ごとの「半分安定 する件数 」kで決まります。k件の データ がそろうと、実績 の半分 が実力 (または打ち方の個性 )、半分 が運で説明 できる、という件数 です。求め方は 次のとおりです。
選手 ごとのシーズン 成績 のばらつきを計算 する(全体のばらつき)。 試合数 から、運だけで生じるばらつきを計算 する(試合数 が4倍 になると半分 になる)。 全体 のばらつきから運の分を差し引き、残りを「本当 の実力 の差」とする。 k = 運のばらつき(1件あたり) ÷ 本当の実力の差を計算する。 2018-19 以降 のレギュラーシーズン で、1シーズン 10半荘 以上出場 した、のべ256人 分のデータ を使っています。
指標 k(半荘換算) 90%区間 1シーズンでの実績の重み 副露率 約5半荘 約4半荘〜約9半荘 83%立直率 約46半荘 約30半荘〜約103半荘 35%和了率 約88半荘 約54半荘〜約257半荘 22%放銃率 約86半荘 約50半荘〜約301半荘 23%1半荘あたりポイント 約408半荘 約143半荘〜上限なし 6%平均着順 約489半荘 約121半荘〜上限なし 5%
2.2 推定値の計算 実力推定 は、実績 とリーグ 平均 を、試合数 nとkの比で混ぜた値です。
推定値 = (n × 実績 + k × リーグ平均) ÷ (n + k)
具体的 には、佐々木寿人 選手は通算 304半荘 で1半荘 あたり+3.4pt です。ポイント のkは約408半荘 、リーグ 平均 は0なので、(304 × 3.4 + 408 × 0) ÷ (304 + 408) ≈ +1.4が実力推定 になります。「実績 の重み」は n ÷ (n + k)で、この例では43% です。推定 に本人 の実績 をどれだけ使ったかの割合 で、その選手 が強い確率 ではありません。
「× 0」は 何をしているのか
0を掛けているので意味 のない計算 に見えますが、この式は、佐々木寿人 選手の実際 の304半荘 に、リーグ 平均 どおりに打った架空 の408半荘 を付け足して、合わせた712半荘 の平均 を取り直す 計算 です。Mリーグ の ポイント は1試合 の4人 の合計 がいつも0なので、リーグ 平均 も1半荘 あたり0pt 。架空 の408半荘 の合計 が408 × 0 = 0になる、というのがこの部分です。
和了率 のように平均 が0でない指標 では、この部分 は0になりません。どの指標 も 同じ形の式で計算 しているので、ここでも省かずに書いています。試合数 が少ない選手 ほど架空 の半荘 の比重 が大きくなり、推定 は平均 (0)に 近づきます。実績 の重み43% は、混ぜた712半荘 のうち本人 の実際 の成績 が占める割合です。
1シーズン だけだと引き戻しはさらに強くなります。2025-26 に1半荘 あたり+16.2pt だった下石戟 選手(38半荘 )でも、実力推定 は+1.4ptです。
実力推定 が平均 に近いことは、「この選手 は平均的 な選手 だ」と いう評価 ではありません。 「これまでのデータ からは、 平均 との差を運と区別 できるほどの証拠 がない」と いう意味 です。試合数 が増えれば、推定値 は実績 に近づいていきます。
2.3 推定の幅と「上限なし」 k自体 も推定値 です。選手 をくじ引きのように選び直して同じ計算 をする方法 (ブートストラップ )を 300回 行い、90% 区間 を出しています。
着順 やポイント では、kの区間 の上限 が定まりません。 これは、 今のデータ では「プロ 同士 の成績 の差はすべて運」と いう可能性 すら否定 できない、という意味 です。一方 、副露率 や立直率 など打ち方の指標 は区間 が狭く、選手 ごとの違いがはっきりしています。
2.4 各選手の90%区間 推定値 の横にある90% 区間 は、選手全体 で見て9割以上 の選手 の本当 の値がその範囲 に入る ように作った幅です。推定値 は平均 に引き戻しているので、本当 の値が平均 から遠い選手 ほど、推定値 は本当 の値より平均寄 りにずれます。区間 はこのずれの分も見込 んで、通常 の「推定値 ± 1.645 × 標準誤差 」よ り少し広く取っています(Armstrong, Kolesár, Plagborg-Møller, 2022)。
この方法 は、選手 の実力 の分布 を正規分布 と決めつけずに、選手全体 で平均 9割が区間 に入るように作られています(論文 の前提 のもとで)。特定 の1人 について「9割の確率 でこの範囲 にある」と いう意味 ではありません。引き戻しが 強い指標 (着順 ・ポイント )ほど区間 は広めになり、引き戻しがほとんどない指標 (副露率 など)で は通常 の区間 とほぼ同じです。
95% ではなく90% にしているのは、読みやすさとのバランス です。 95% は広く使われている慣習 で、特別 な根拠 のある数字 ではありません。麻雀 の成績 は1試合 ごとの揺れが大きく、95% にすると区間 がさらに広がって、ほとんどの選手 の区間 が重なり、違いが読み取れなくなります。そこで、 1割は外れることを受け入れて区間 を狭めています。90% はサイト を作った最初 から、すべての指標 ・選手 ・検証 で同じにしていて、結果 を見てから選び直したものではありません。その分、 90% 区間 が平均 (0)を またがなくても、95% 区間 ならまたぐことがあります。区間 の端が0に近い選手 は、平均 との差がはっきりしているとまでは言えない点に注意してください。
※ 区間 が正しく働くことは、答えを決めた架空 のシーズン で確かめています(この計算 は正しいの? )。
2.5 「1シーズンの成績差の94%が運」の 意味 トップページ の数字 は、1シーズン の「1半荘 あたりポイント 」が 選手 ごとにばらつく、そのばらつきのうち、運だけで生じる分の割合 です。「1半荘 の結果 の94% が運」 「どの選手 も94% は運」と いう意味 ではありません。選手 どうしの成績 の差が、どこから来ているかの割合です。
計算 のしかた(2018-19 〜2025-26 のレギュラーシーズン 、1シーズン 10半荘 以上ののべ256人)
1半荘 のポイント は、同じ選手 でも標準偏差 で約45pt ばらつく(トップ なら+50pt 前後 、ラス なら−50pt前後)。 1シーズン 約25半荘 の平均 にすると、運だけで生じるばらつきは45 ÷ √25 ≈ 9.2pt。全員 がまったく同じ実力 でも、シーズン 成績 はこれだけ散らばる。 実際 の選手 ごとのシーズン 成績 (1半荘 あたり)の ばらつきは 9.5pt。 ばらつきは二乗 (分散 )に すると足し引きできるので、9.2² ÷ 9.5² ≈ 94%が運、残りが実力の差。 つまり、実際 の成績表 のばらつき(9.5pt )は 、運だけで説明 できるばらつき(9.2pt )と ほとんど同じ大きさです。実力 の差として残るのは、標準偏差 で1半荘 あたり約2.2pt 。1シーズン 25半荘 の 通算 にすると、実力 による差は±56pt 程度 、運による差は±231pt程度です。
※ 2.1 のkで計算 しても同じ数字 になります。1シーズン 25半荘 の 実績 の重みは25 ÷ (25 + 408) ≈ 6%で、残りの94%が運です。
確かめ:試合結果を選手の間でシャッフルする 計算 の前提 に頼らない確かめ方もあります。同じシーズン の 試合結果 (1半荘 ごとのポイント )を 、選手 の間でくじ引きのように配り直します。こうすると 選手 と成績 のつながりが完全 に切れるので、「全員 が同じ実力 だった世界 」の シーズン ができます。これを 1,000回くり返しました。
シャッフル したシーズン のばらつき:平均 9.1pt (9割は8.5 〜9.8ptの範囲) 実際 のシーズン のばらつき:9.5pt 実際 の成績表 は、シャッフル した「全員同 じ実力 」の 成績表 の範囲 に収まっています (シャッフル の20% が、実際以上 にばらつきました)。 1シーズン の 成績表 だけを見ても、実力差 のある世界 なのか、全員 が同じ実力 でくじを引いた世界 なのか、ほとんど見分 けがつかない、ということです。
「少なくとも85%」の意味 実力 の差の大きさ(上の2.2pt )自体 も推定値 で、幅があります。2.3 のブートストラップ で、実力差 がいちばん大きく見積 もられる側(kの90% 区間 の下限 、約143半荘 )を 取っても、運の割合 は85% です。逆に、 実力差 が0(すべて運)と いう可能性 は、今のデータ では否定 できません。
※ 長い期間 では実力 の割合 が増えます。通算 304半荘 まで積み重ねると、実力 で説明 できる割合 は約43% になります。平均着順 でも同じ計算 で、1シーズン の差の約95%が運です。
3. パーセンタイルと打ち方のタグ パーセンタイル は、同じシーズン で規定 の試合数 (シーズン は10半荘 、通算 は40半荘 )以上 に出場 した選手 の中での位置 です。実績 ではなく推定値 で並べている ので、少ない試合数 の偶然 で上位 に来ることはありません。
バー の色は、良し悪しのある指標 (和了率 や放銃率 など)だ けに付けています。赤が 良い側、青が悪い側です。立直率 や副露率 のように「多いほど良い」と は言えない指標 は、打ち方の違いを表すものとして灰色 にしています。
打ち方のタグ (「鳴き多め」「リーチ 多め」な ど)は 、通算 の推定値 が上位 または下位 25% に入り、しかもその指標 の実績 の重みが50% 以上 の場合 だけ付けています。データ が少なくて偶然 かもしれない特徴 には、タグ を付けません。
選手 ページ 冒頭 の文章 も同じ考え方で作っています。副露率 と立直率 の組み合わせで打ち方のタイプ を書き、ほかの打ち方の指標 のうち上位 または下位 15% に入り実績 の重みが50% 以上 のものを、極端 な順に最大 3つ挙げています。最後 の一文 は、実力推定 の90% 区間 が0をまたぐかどうか(運の幅を考えても平均 と差があるか)で 書き分けています。
選手 ページ の最後 の「打ち方が似ている選手 」は 、打ち方の12 の指標 の通算 の推定値 を、選手 の間のばらつきで割ってそろえ、全体 として近い順に3人 を選んでいます。このとき、 データ で確かに言える指標 (副露率 や牌効率一致率など、実績 の重みが大きいもの)ほど重く扱っています。重み付けの 方法 は、出場 シーズン を奇数年 と偶数年 に分けて似ている選手 を出し直したとき、答えが最もよく一致 するものを選びました。最も 近い選手 でもほかの選手 より離れている場合 (全選手 の上位 25% に入るほど遠い場合 )は 、「独自 のスタイル 」と 表示します。
※ パーセンタイル は選手同士 の比較 で、「100 」で も完璧 という意味 ではありません。規定 の試合数 に届かない選手 には表示しません。
3.1 牌効率一致率 自由 に手を組める場面 の打牌 で、「次に手が進む牌の残り枚数 (受け入れ枚数 )」が 最も多くなる牌を切った割合 です。対象 は、自分 も他家 もリーチ していない、自分 の12巡 目までの打牌 で、切った後にテンパイ まであと1〜2枚 の手(1向聴 ・2向聴 )に 限ります。受け入れ枚数 は、 自分 から見えていない牌(山と他家 の手牌 )だ けを数えます。
受け入れ最大 の牌を切らなかった打牌 は、理由 で分けて数えています。受け入れ最大 の牌が すべてドラ ・赤5・役牌 の対子 のどれかで、それを残した場合 は「打点 のための崩し」、向聴数 を戻した場合 は「後退 」、それ以外 は「受け入れの少ない選択 」で す。リーグ 全体 では約73% の打牌 が受け入れ最大 と一致します。
この指標 は灰色 (良し悪しなし)に しています。 選手 ごとの差は安定 していて(前半 と後半 の相関 0.46 、翌シーズン との相関 0.52 )、打ち方の個性 としては確かに表れます。一方 で、一致率 が高い選手 ほど和了率 ・副露率 ・放銃率 が高く、和了打点 は低い傾向 があり、運を除いたポイント との関係 は見られませんでした(相関 0.12 、統計的 に有意 でない)。受け入れ枚数 は 「速さ」だ けを測る物差 しで、打点 や守備 、読みの価値 は入っていないためです。一致率 が高いのは「速度 を重視 した手組 み」、低いのは「形や打点 を重視 した手組 み」と 読むのが適切 です。天鳳 の研究 でも、AI と違う選択 をした割合 は卓のレベル が上がるほど下がる一方 、最上位 の鳳凰卓 の中では成績 との関係 は弱かったと報告 されています(大神ほか, 2023)。
※ 2026年 9月 時点の全打牌 (約50 万打牌 )で の検証 です。副露 した手も含み、副露後 は七対子 ・国士無双 を数えません。
3.2 聴牌巡目(運の補正後)・即リーチ率・ダマ率 鳴かずに12巡 目(自分 の12 打目 )ま でに聴牌 した局を対象 に、聴牌 までの早さと、聴牌 した後の選択 を見ています。
聴牌巡目 (運の補正後 ) は、配牌 とツモ の運をそろえたうえでの聴牌 の早さです。リーグ 全体 の局から、「配牌 の向聴数 」と 「聴牌 までのツモ の良し悪し(手が進んだツモ の数と、その期待値 の差)」で 聴牌巡目 を予測 する式を作り、平均的 な選手 ならその配牌 とツモ で何巡目 に聴牌 したかを出します。実際 の聴牌 がそれより何巡早 かったかを求め、リーグ 平均 の聴牌巡目 から差し引いて「平均的 な配牌 とツモ だったら何巡目 に聴牌 したか」に 直した値が、この指標 です。小さい ほど早い聴牌 です。局ごとのばら つきが大きく、選手 の特徴 が表れるまでに800局 前後の聴牌 が必要 なので、多くの選手 で推定値 は平均寄 りになります。
即リーチ 率 は聴牌 した打牌 でそのままリーチ した割合 、ダマ 率 はその局で最後 までリーチ しなかった割合 です(聴牌 した後に待ちを変えてからリーチ した局は、どちらにも入りません)。即リーチ 率は リーグ 全体 で年々 上がっていて(2018-19 シーズン の約67% から2026-27 シーズン の約78% )、ダマ 率は約23% から約17% に下がっています。そのため、 各局 の値を「そのシーズン のリーグ 平均 との差」に 直してから集計 しています。出場 した時期 が違う選手同士 でも、同じ時代 の中でどれだけ即リーチ が多いかで比べられます。
どれも灰色 (良し悪しなし)で 表示 しています。即リーチ が 多い選手 ほど成績 が良い傾向 も見えますが、はっきりした関係 とは言えないためです。
4. 運の指標 運の指標 は、どれも「選手 の判断 では変えられないもの」を 、期待値 との差で測っています。プラス は平均 より恵まれていたことを表します。
指標 測り方 配牌の良さ 配牌 の向聴数 が、リーグ 平均 よりどれだけ少ないか 配牌のドラ・赤 配牌 に入っていたドラ と赤ドラ の枚数 の、リーグ平均との差 ツモの良さ ツモ で手が進んだ回数 と、そのときの手牌 から計算 した「手が進む確率」との差 裏ドラ運 リーチ で和了 したときの裏ドラ の枚数 と、見えていない牌から計算 した期待値との差 一発率 リーチ 1回 あたりの一発 の率の、リーグ 平均 との差。どんな形で リーチ するかは選手 の判断 なので、4つの中では打ち方の影響 が残りやすい指標です
4.1 ツモの良さは「その手牌から見た確率」と 比べる ツモ の良さは、運の中でも成績 への影響 がいちばん大きい部分 です。ただし、 測り方を間違 えると実力 が混ざります。たとえば 「同じ向聴数 なら、手が進む確率 はみな同じ」と みなすと、受け入れの広い形を残す牌効率 の上手 な選手 ほど「ツモ が良かった」こ とになってしまいます。
そこで、ツモ のたびに次の計算 をしています。
その選手 が実際 に残していた手牌 について、引けば向聴数 が下がる牌の種類を調べる。 その牌が、その選手 から見えていない牌(山と他家 の手牌 )の 中に何枚残 っているかを数える。 手が進む確率 = 有効牌の残り枚数 ÷ 見えていない牌の枚数とする。 実際 に手が進んだかどうか(1か0)か ら、この確率を引く。 ポイント は、確率 を「選手 が残した手牌 」か ら計算 していることです。 牌効率 の良さは確率 の側に入るので、差し引いた残りは、どんな打ち方をしていても平均 0になり、打ち方の影響 をできるだけ除いた運と見なせます。
※ 他家 は使いやすい牌を抱えていることが多く、単純 に数えた確率 は実際 より少し高めに出ます。そのため、 向聴数 ごとに実際 の頻度 と合うよう比率 で補正しています。
5. 運を除いたポイント 運の指標 がわかれば、その分を成績 から差し引くことができます。手順 は次のとおりです。
局ごとに、自分 と相手 3人 それぞれの運の指標 を並べる。ツモ の運は、引く前の向聴数 (聴牌 ・1向聴 ・2向聴 ・3向聴以上 )ごとに分けて数える。 その局で動いた「期待 ポイント 」(6章)を 、運の指標 から予測 する式を作る。 予測 された分を「運による獲得 ポイント 」と し、実際 のポイント から差し引く。 運の指標 はどれも平均 0になるように作ってあるので、差し引いても平均的 な評価 は変わらず、ばらつきだけが減ります。 マラソン で、追い風を受けた区間 のタイム を少し足し、向かい風の区間 を少し引いて比べるのと同じです。風の補正 は 平均 すると0なので、誰かを一方的 に有利 にも不利 にもせず、「たまたま風に恵まれた」分だけを取り除きます。
ツモ の運を向聴数 ごとに分けるのは、同じ「手が進むツモ 」で も価値 が大きく違うからです。聴牌 からの1枚 は和了 そのものですが、3向聴 からの1枚 は、和了 までの長い道のりの一歩 にすぎません。予測 の式が見積 もった1枚 あたりの価値 も、聴牌 からのツモ が最も大きく、向聴数 が多いほど小さくなりました。まとめて1つの値で 数えていたころは、ばらつきの減り方が約20%でした。
この補正 で1半荘 ごとのポイント のばらつき(分散 )は 34% 小さくなり、半分安定 する試合数 は約408半荘 から約270半荘 に縮みます。
※ 予測 の式は、あるシーズン の補正 にそのシーズン 自身 の結果 を使わないよう、シーズン ごとに他のシーズン のデータ だけで作っています。
※ 同じ考え方はポーカー のAI の評価 (AIVAT )や 、東京大学 による麻雀 の研究 (MJ-DLVAT )でも使われています。これらは 局面 の価値 をニューラルネットワークで評価 してより多くの運を取り除いていますが、本サイト では牌譜 から直接数 えられる運に限っています。
6. トップ確率とポイントの内訳 6.1 トップ確率 試合 ページ のトップ 確率 は、各局 の開始時点 から、試合 の残りを何度 もシミュレーション して求めています。
過去 の実際 の局の結果 を1つ無作為 に選ぶ(親から見た4人 の点数 の増減 と、親が連荘 したかどうか)。 その結果 を、いまの親の位置 に合わせて当てはめ、点数 と供託を進める。 南4局 で親が連荘 しなければ試合終了 。そうでなければ 1に戻る。 試合 の最後 の点数 からMリーグ のルール でポイント と着順を出す。 これを2,000回 繰り返し、トップ で終わった割合 を確率とする。 オーラス は他の局と戦い方が違うので、オーラス の結果 はオーラス の局から選びます。また、 あるシーズン の確率 には、そのシーズン 以外 の局の結果 だけを使っています 。答えを 知っているデータ で予測 する、という反則 を避けるためです。
精度 の確認 として、予測 したトップ 確率 と実際 の結果 を比べています。全員 を25% と予測 した場合 と比べて予測誤差 (ブライアスコア )は 29% 小さく、予測 した確率 と実際 にトップ になった割合 もほぼ一致 しています。一致 の度合 いはこの計算 は正しいの? で詳しく確かめています。
※ 2,000回 の繰り返しによる標準誤差 は、最大 でも±1.1ポイント程度です。
6.2 ポイントの内訳(期待ポイントの変化) 同じシミュレーション で、各局 の開始時点 での「最終 ポイント の期待値 」も 出しています。ある 局の前後 で期待値 がどれだけ動いたかが、その局がその選手 にもたらした価値です。
局ごとの変化 をすべて足すと、試合 の最終 ポイント とぴったり一致 します (開始時点 の期待値との差として)。
選手 ページ の「ポイント の内訳 」は 、この変化 を局の結果 ごと(自分 の和了 ・放銃 ・他家 のツモ ・他家同士 の出和了 り・流局 )に 集計 したものです。試合 ページ の「この試合 を決めた一局 」は 、誰かの期待 ポイント を最も大きく動かした局です。
7. 局収支の内訳 局収支 は、1局 あたりの点数 の増減 を、何によって増えたか・減ったかに分けたものです。分類 はとつげき東北 ・伊藤毅志 (2009 )の 分析 にならい、和了 を「リーチ 」「副露 」「ダマ 」、放銃 を相手 の手の種類 (リーチ ・副露 ・ダマ )で 分け、他家 のツモ とその他(流局 など)を 加えています。
各項目 を足すと、その選手 の1局 あたりの平均収支 になります。リーグ 全体 では、1局 あたりリーチ での和了 が+924点 、他家 のツモ が-757点 です。選手 ページ ではこのリーグ 平均 との差を並べているので、どこで稼ぎ、どこで失っているかが比べられます。
※ 局収支 は点数 (素点 )の 増減 で、順位点 は含みません。ポイント との関係 は6.2 の「ポイント の内訳 」で 見られます。
8. 順位確率と進出確率のシミュレーション シーズン の残りには無数 の展開 があります。それを 一つずつ数え上げる代わりに、ありうる展開 を20,000回 くじ引きのように作り、その中で各チーム が何位 になったか、セミファイナル ・ファイナル に進んだか、優勝 したかを数えます。手順 は次のとおりです。
レギュラーシーズン の残り試合 を、公表 されている日程 どおりの4チーム で組む(セミファイナル とファイナル は、進出 チーム が決まるまで日程 がないため無作為に組む)。 1試合 ごとに、過去 のMリーグ の試合結果 (1位 〜4位 のポイント )を 1つ無作為 に選び、4チーム に割り当てる。 チーム の実力 に応じて、4チーム のポイント をわずかにずらす:ポイント + s − (4チームの s の平均)。sは そのチーム の選手 の、運を除いたポイント の実力推定 (通算 )の 平均 です。4チーム の合計 は 0のままです。 レギュラーシーズン が終わったら、上位 チーム がポイント の半分 を持ってセミファイナル へ進み、同じ手順 で試合を続ける。 セミファイナル 、ファイナル も同じように行い、最終順位 と優勝 チーム を記録する。 今季 の方式 は、レギュラーシーズン が各チーム 120試合 で上位 6チーム がセミファイナル へ、セミファイナル が各チーム 20試合 で上位 4チーム がファイナル へ進みます。ポイント の持ち越しが「半分 」で あることは、前シーズン の公式記録 で確認しています。
チーム の実力差 は、ポイント にはわずかな差しか生みません。 実力 は所属選手 の「運を除いたポイント 」の 実力推定 の平均 で、1試合 あたり数pt 程度 です。2章で 見たとおり、1シーズン の成績 は大部分 が運で決まるためです。シーズン 序盤 に全チーム の確率 がほぼ横並 びになるのは、この計算 の結果 として自然 なことです。
※ 1試合 の結果 は相手 チーム と無関係 に選ぶので、組み合わせが効くのは、上のチーム の実力 による補正 の部分 だけです。実際 の日程 と無作為 な組み合わせで計算 を比べると、どのチーム の確率 も差は1ポイント 以内 (計算 の乱数 による揺れと同じ程度)でした。
※ 20,000回 の繰り返しによる標準誤差 は、最大 でも±0.4 ポイント 程度 です。表示 が「0% 」で も「起こりえない」で はなく、「シミュレーション の中で一度 も起きなかった」と いう意味です。
9. 最終順位の表と確率の推移 「レギュラーシーズン の最終順位 」の 表は、8章のシミュレーション で各チーム が1位 〜10位 のどこで終わったかを数えたものです。各チーム の行を 横に足すと100% 、各順位 の列を縦に足しても100% になります。太線 より左がセミファイナル 進出圏 です。色の濃さは 表の中で最も高い確率 を基準 にしているので、シーズン 序盤 の確率 が横並 びの時期 でも、どこに山があるかが見えます。塗りつぶした マス は、各チーム で最も確率 の高い順位です。
※ シミュレーション の中でポイント がちょうど同じになった場合 は、プログラム 内部 のチーム の並び順で順位 を決めています。0.1pt 単位 のポイント が完全 に一致 することはごくまれで、確率 への影響 はほとんどありません。
「セミファイナル 進出確率 の推移 」は 、各試合日 の終了時点 の確率 です。過去 の時点 の確率 は、その日までの結果 だけを使って計算 し直したもの で、その日に実際 にサイト に表示 されていた値とは限りません。
※ 過去 の時点 の計算 は5,000回 の繰り返しで行っているため、標準誤差 は最大±0.7ポイント程度です。
10. この計算は正しく働いているか 計算 の手順 が理屈 の上で正しくても、プログラム の誤りや前提 の崩れがあれば、数字 は信用 できません。そこで、 統計学 の論文 で使われている方法 で、4つの点を確かめています。合格 の基準 は結果 を見る前に決め、不合格 だったものもそのまま載せています。 対象 は2018-19 〜2025-26 の完了 したシーズンです。
確かめたこと 方法 結果 実力推定と90%区間 正解 が分かっている模擬 シーズン で計算し直す ✓ 合格 実力推定の予測力 シーズン 前半 から後半を予測する ✓ 合格 運の指標に実力が混ざっていないか 並べ替え検定 ✓ 合格 トップ確率・ラス確率の当たり具合 信頼性曲線(CORP )と 較正の検定 △ 一部不合格
それぞれの確かめ方と結果 、見つかった弱点 とその直し方は、この計算 は正しいの? のページ で、できるだけやさしく説明しています。
11. この計算の限界と単純化 単純化 内容と影響 実力はシーズン中一定 調子 の波・成長 ・体調 は考えていません。好不調 が本当 にあるなら、その分は「運」に 含まれます。 選手の実力差の大きさ 着順 ・ポイント のkは幅が大きく、上限 が定まりません。推定値 の引き戻しの強さも、その分だけ不確 かです。各選手 の90% 区間 は、実力差 が小さい場合 には広めに出ます(検証 )。 測れる運は一部だけ 配牌 ・ツモ ・裏ドラ ・一発以外 の運(相手 の待ちに当たったか、相手 のツモ が早かったか、など)は 差し引いていません。 ツモの良さの補正 他家 の手牌 の偏りを、向聴数 ごとの比率 でまとめて補正 しています。局面 ごとの細かな偏りは残ります。 トップ確率の局の結果 オーラス 以外 は、点数状況 によって戦い方が変わることを考えていません(大きくリード したトップ 目が守りに入る、など)。本場 ・供託 による点数 の違いもおおまかです。 順位確率のもとになるデータの少なさ シーズン 序盤 は消化試合 が少なく、チーム の実力差 も運に比べて小さくしか推定 できないため、確率 はほぼ横並 びになります。表示 の誤差 はシミュレーション 回数 によるぶれだけで、実力 の見積 もりの誤差 は含みません。過去 のシーズン で当たっていたかも、優勝 が1シーズン1回しかないため確かめられていません。 チームの実力 所属選手 の平均 で、誰が何試合 に出るかは考えていません。新加入 の選手 はリーグ 平均 として扱います。 対戦の組み合わせ レギュラーシーズン は公表 された日程 を使っています。延期 などで日程 と実際 の試合 が合わなくなったときは、合わせ直すまで無作為 な組み合わせで計算 します。セミファイナル 以降 は無作為です。 牌譜の不備 書き起こしに不備 のある23局 は除いています(全体 の0.1% )。牌譜 そのものに情報 が欠けている局で、打ち方と運の指標 に反映 されません(試合結果には含みます)。 対象の範囲 Mリーグ の試合 だけで推定 しているため、選手 の他の対局 の実績 は含みません。
コラム:なぜ推定値はこんなに平均に寄るのか 選手 ページ を見ると、実績 で大きくプラス の選手 も、実力推定 では0に近い値になっています。「計算 が慎重 すぎるのでは?」と 思われるかもしれません。理由 は3つあります。
1シーズン の試合数 では、運のばらつきが実力差 よりずっと大きい。 サイコロ を25回 振った平均 を比べれば、全員 が同じサイコロ でも3.1 の人もいれば3.9 の人もいます。Mリーグ の 1シーズン は1人 あたり約25半荘 で、ポイント 差のうち運で説明 できる割合 は推定94%です。 トップクラス 同士 の対戦 なので、実力差 そのものが小さい。 平均着順 の本当 の実力差 は、標準偏差 で0.051 着ほどしかありません。 平均 に寄せた方が、将来 の成績 をよく当てる。 過去 のシーズン で、前シーズン の成績 から次シーズン の成績 を予測 して比べると、実績 をそのまま使った場合 の予測誤差 は、平均 に寄せた推定値 の約2倍でした。 正直な例外 この引き戻しが外れやすい場合 もあります。本当 に実力 が変わった選手 (大きく成長 した・調子 を崩した)や 、Mリーグ での試合数 が少ない新加入 の選手 では、過去 のデータ に頼る推定 は現在 の実力 とずれることがあります。また、 推定 の土台 になるk自体 の幅が大きいことは、2.3 で書いたとおりです。推定値 は「これまでのデータ から言えること」で あり、選手 の評価 や予想 そのものではない、と受け取ってください。
詳しい分析 はコラム 「Mリーグ の着順 はどれだけ運で決まるのか? 」に まとめています。
参考文献 Ogami, Amano, Tsuruoka. "MJ-DLVAT: A Deep Learning Value Assessment Technique for Mahjong." IEEE, 2024. 大神卓也 ・天野克敏 ・奈良亮耶 ・鶴岡慶雅 「分散減少法を用いた麻雀 における実力推定 」ゲーム プログラミングワークショップ2023論文集, pp.76–82, 2023. Burch, Schmid, Moravčík, Bowling. "AIVAT: A New Variance Reduction Technique for Agent Evaluation in Imperfect Information Games." AAAI, 2018. Duersch, Lambrecht, Oechssler. "Measuring skill and chance in games." European Economic Review 127, 2020. とつげき東北 ・伊藤毅志 「牌譜 の解析 による麻雀 の分析 」人工知能学会誌 24(3), 2009. Li et al. "Suphx: Mastering Mahjong with Deep Reinforcement Learning." arXiv:2003.13590, 2020. Talts, Betancourt, Simpson, Vehtari, Gelman. "Validating Bayesian Inference Algorithms with Simulation-Based Calibration." arXiv:1804.06788, 2018. Brown. "In-season prediction of batting averages: A field test of empirical Bayes and Bayes methodologies." Annals of Applied Statistics 2(1), 2008. Dimitriadis, Gneiting, Jordan. "Stable reliability diagrams for probabilistic classifiers." PNAS 118(8), 2021. Brill, Yurko, Wyner. "Exploring the difficulty of estimating win probability: a simulation study." Journal of Quantitative Analysis in Sports 22(1), 105–115, 2026. doi:10.1515/jqas-2024-0130(arXiv:2406.16171, 2024) Armstrong, Kolesár, Plagborg-Møller. "Robust Empirical Bayes Confidence Intervals." Econometrica 90(6), 2022. Phipson, Smyth. "Permutation P-values Should Never Be Zero." Statistical Applications in Genetics and Molecular Biology 9(1), 2010. 本ページ の内容 は統計的 な推定 とシミュレーション の解説 であり、計算結果 はMリーグ 機構 の公式発表 ではありません。数値 は試合翌朝 の自動更新 で最新 のデータ に置き換わります。