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魚谷侑未は強いのか?
通算成績は49人中34位。ところが測れる運を除くと、実力の推定値はリーグ2位に上がります。ただし誤差は大きく、どこまで言えるのかも含めて読みます。
魚谷侑未選手は強いのでしょうか。
セガサミーフェニックスの一員として、Mリーグ初年度の2018-19シーズンから6シーズンを戦いました。2019-20シーズンにはレギュラーシーズンMVPに輝き、2024年に契約満了でチームを離れています。
Mリーグでの通算成績を見ると、175半荘で合計−277.4pt、1半荘あたり−1.6ptです。通算40半荘以上に出場した49選手の中では34位。成績表だけを見れば「平均よりやや下」の選手です。
ところが、この成績から測れる運の影響を取り除くと、違う姿が見えてきます。
運を除いた推定値は、リーグ2位
このサイトでは、配牌の良し悪し、ツモ、裏ドラ、一発といった「運」を局ごとに数え、その分を成績から差し引いています(計算方法)。
魚谷選手の場合、運を除いたポイントは1半荘あたり+4.6ptでした。実績の−1.6ptから6pt以上も上がります。
さらに、試合数が限られることによる偶然の揺れを考えて、リーグ平均の方へ引き戻した推定値は+1.8pt。この推定値を並べると、49選手中2位にあたります。
ただし、これは推定値の順位で、本当の実力の順位ではありません。推定には誤差があり(後で見るとおり、90%区間はリーグ平均の0も含みます)、ほかの選手の推定値にも同じように誤差があります。「2位」は、今あるデータから見た一番ありそうな位置、という意味です。
| 1半荘あたり | ポイント |
49人中の順位 |
| 実績 |
−1.6pt |
34位 |
| 運を除いた推定値 |
+1.8pt |
2位 |
測れる運では、49人の中で最も不利だった
実績と推定値にこれだけの差が出たのは、このサイトが測っている運(配牌・ツモ・裏ドラ・一発)で、魚谷選手が49人の中で最も不利だったからです。相手の待ちに飛び込んだか、相手のツモが早かったかといった運は測れていないので、ここでの「運」はその一部です。
測れた運が平均的だった場合と比べて、失ったポイントは1半荘あたり−6.2ptと推定されます。通算175半荘で約1,080ptにのぼり、49選手の中で最下位です。
| 最も運に恵まれなかった選手 |
1半荘あたりの運 |
|---|
| 魚谷侑未(175半荘) |
−6.2pt |
| 朝倉康心(107半荘) |
−5.8pt |
| 浅井堂岐(59半荘) |
−5.4pt |
運は試合数が増えるほど平均に近づくものです。魚谷選手1人を最初から選んで見た場合、175半荘でこれだけ不運に偏るのは、偶然なら約300回に1回の珍しさです。
ただし、この数字は49人の中から最も不運だった選手を後から選んで計算しています。49人のうち誰か1人にこの程度の不運が起きる確率は、ざっと15%ほどあり、リーグ全体で見れば珍しいことではありません。
不運の中身を見ると、次の3つが目立ちます。
- 配牌:配牌の向聴数の良さは49人中47位。スタートの手が悪い局が多かった
- 裏ドラ:リーチして和了ったときの裏ドラの乗りは44位
- ツモ:手が進むツモの引きは38位
出場した6シーズンすべてで、運による獲得ポイントはマイナスでした。ただし、通算で最も不運な選手を選んでいるので、シーズンごとにもマイナスが並びやすいのは当然で、通算の数字とは別の新しい証拠ではありません。なお、選手ごとに「いつも運が悪い」という偏りがあるかをリーグ全体で調べると、そうした偏りは見つかっていません(検証)。打ち方のせいでいつも不運に数えられている、というわけではなさそうです。
| シーズン | 実績 | 運を除く | 運 |
| 2018-19 |
−9.2 |
+1.3 |
−10.6 |
| 2019-20 |
+16.7 |
+22.5 |
−5.8 |
| 2020-21 |
−6.9 |
+5.8 |
−12.7 |
| 2021-22 |
−4.2 |
+0.5 |
−4.7 |
| 2022-23 |
−14.8 |
−11.4 |
−3.4 |
| 2023-24 |
−0.5 |
+4.5 |
−5.1 |
レギュラーシーズンの1半荘あたりのポイント。「運を除く」はシーズンごとの推定値ではなく、実績から運の分を差し引いただけの値です。
レギュラーシーズンMVPを獲得した2019-20シーズンは、レギュラーシーズンで1半荘あたり+16.7pt、ファイナルでも6半荘で+126.0ptを挙げ、チームの準優勝に貢献しました。その好調なシーズンでさえ、運はマイナスでした。
打ち方:失点しない麻雀
魚谷選手の打ち方には、はっきりした特徴があります(通算、49人中の順位)。
- 放銃が少ない:放銃率10.4%は9位
- ダマテンが多い:聴牌してもリーチしない割合は10位
- リーチは少なく、遅い:立直率は43位、平均リーチ巡目は5番目に遅い
- 流局時に聴牌していることが多い:流局時の聴牌率は8位
- 和了率は低い:和了率18.7%は47位
和了の回数で稼ぐのではなく、失点を抑えながら、流局時にも聴牌を残す麻雀です。打ち方が近い選手は、丸山奏子選手、堀慎吾選手、滝沢和典選手でした。
和了の回数が少ない魚谷選手の場合、数少ない和了の局でのツモや裏ドラの偏りが、通算成績に目立って表れた可能性があります。ただ、守備的な打ち方が一般に運に左右されやすいかどうかは、このデータからは言えません。和了が少ない分だけ結果が揺れやすくなる一方で、大きな放銃を避ける分だけ揺れが小さくなる面もあるからです。
結論:強いのか
成績表の数字だけを見れば、魚谷選手は平均よりやや下の選手です。
しかし、測れる運はリーグで最も不利で、それを除いた推定値はリーグ2位でした。生の成績ほど弱かったとは考えにくい、つまり成績表は魚谷選手の実力を低く見せている可能性が高い、と言えます。
一方で、推定値の90%区間は−1.3〜+4.9ptと広く、平均(0)も含みます。推定値の順位が2位でも、「Mリーグ上位級の実力者だった」と言い切れるほどデータは強くありません。175半荘でも、麻雀の実力をはっきり測るにはまだ足りないのです。
方法と注意
- 数字は2018-19シーズン以降の牌譜から集計しています。比較の相手は、通算40半荘以上に出場した49選手です。
- 運の指標と「運を除いたポイント」の計算は計算方法のとおりです。運を除いたポイントのばらつきは、実績より約35%小さくなります。
- 「約300回に1回」は、選手ごとの運の大きさのばらつきから、175半荘でこの値以下になる確率を正規分布で近似したものです。「49人の誰かに起きる確率約15%」は、49人を独立とみなした
1 − (1 − 1/300)^49です。 - 推定値(+1.8pt)は、運を除いたポイントを試合数に応じてリーグ平均の方へ寄せた値です。実績の重み(実力推定に本人の実績をどれだけ使うか)は39%です。
- 打ち方の順位は、推定値のリーグ内順位です。個々の数字は魚谷侑未選手のページでも確かめられます。
このコラムに登場する選手:魚谷侑未