Most differences in results are within chance.They are no grounds for criticising players.

コラム 選手

多井隆晴は配牌が悪いとき、早く切った数牌の筋を持っているのか? (Japanese)

とある検討配信で出た「多井さんは配牌が悪いとき、早く切った数牌の筋を持っている」という読みを牌譜で確かめました。筋を持っていることが多いのは確かでしたが、それはリーグ全体の傾向で、多井選手に特に強いという証拠はありませんでした。

多井隆晴は配牌が悪いとき、早く切った数牌の筋を持っているのか?配牌が悪い局の切り順をMリーグの牌譜で検証 | M Data Lab

Most differences in results are within chance.They are no grounds for criticising players.

コラム 選手

多井隆晴は配牌が悪いとき、早く切った数牌の筋を持っているのか?

とある検討配信で出た「多井さんは配牌が悪いとき、早く切った数牌の筋を持っている」という読みを牌譜で確かめました。筋を持っていることが多いのは確かでしたが、それはリーグ全体の傾向で、多井選手に特に強いという証拠はありませんでした。

とある検討配信を見ていたら、「多井さんは配牌が悪いとき、早めに切った数牌の筋を持っている」という読みが出てきました。

言われてみると、ありそうな話です。気になったので、牌譜で検証してみました。

先に答えを書くと、配牌が悪いときに、早く切った数牌の筋を持っていることが多いのは確かでした。ただしそれはリーグ全体でも見られる傾向で、多井選手の傾向がほかの選手より強いという明確な証拠は得られませんでした。

調べ方

Mリーグの牌譜には、全員の配牌とツモが残っています。そのため、どの巡目でも、各選手の手牌を正確に再現できます。

1局×1選手ごとに、次のように数えました。

  • 配牌が悪い:配牌13枚の向聴数が5以上。全体の約13%です。
  • 早く切った数牌:自分の1〜5打目で、最初に手出しした数牌。配牌が悪い局では、約4分の3が1か9でした。
  • 筋を持っている:その牌を切った直後に、同じ色の筋の牌(6mなら3mか9m、1mなら4m)を1枚以上持っている。

筋の牌を持っている割合だけを見ても、それが多いのか少ないのかは分かりません。そこで、同じ数字の牌をほかの2色で持っている割合を物差しにしました。6mを切ったなら、3p・9p、3s・9sを持っている割合です。この差を「上乗せ」と呼びます。

この上乗せには、色ごとの手牌の構成や、どの牌を先に切るかという選択も含まれます。筋だけの独立した効果を測ったものではありません。

多井選手に特に強い傾向は確認できなかった

配牌が悪い局での結果です。

配牌が悪い局件数筋を持っている物差し(ほかの色)上乗せ
多井選手 425 56.7% 38.5% +18.2pt
ほかの選手 11,545 56.6% 38.3% +18.4pt

「ほかの選手」は、ほかの選手の局をすべてまとめた値です(局数の多い選手ほど重く効きます)。

多井選手も、ほかの選手も、早く切った数牌の筋を、ほかの色の同じ数字より18ポイントほど多く持っていました。多井選手とほかの選手の上乗せの差は −0.1ポイントで、90%区間は −5.3〜+5.0ポイントです。

条件を変えても、差ははっきりしませんでした。

条件多井選手 − ほかの選手 90%区間
切った直後(向聴5以上) −0.1pt −5.3〜+5.0
自分の9打目の後(向聴5以上) −1.3pt −6.2〜+3.8
切った直後(向聴4以上) −2.0pt −4.7〜+0.6
自分の9打目の後(向聴4以上) −0.5pt −3.2〜+2.3

9打目の後の行は、9打目まで続いた局だけで数えています(和了などで早く終わった局は入らないので、件数が減ります)。

選手ごとに上乗せを比べると、配牌が悪い局が150局以上ある35人のうち、多井選手は20位でした。35人の上乗せは+9ポイントから+26ポイントまで散らばっています。この散らばりが偶然の範囲かどうかは確かめていないので、全員が同じ強さの傾向を持っているとまでは言えません。

配牌が悪いときに大きくなる

一方で、配牌が悪いときに上乗せが大きくなること自体は、はっきりしていました。配牌が良い局(向聴3以下)では、上乗せは全体で+4ポイントほどしかありません。配牌が悪い局では+18ポイントです。

切った牌の数字ごとに分けると、上乗せが大きいのは1・9を切ったときでした。

早く切った数牌配牌が悪い局筋を持っている物差し上乗せ
1・9 → 4・6 8,960 56.7% 36.1% +20.6pt
2・8 → 5 1,889 52.0% 37.6% +14.4pt
3・7 → 6・4 348 45.7% 32.9% +12.8pt
4・6 → 1と7・3と9 525 73.9% 70.4% +3.5pt
5 → 2と8 248 69.8% 62.1% +7.7pt

3〜7を早く切った局は少なく、3行目以降は幅を持って見てください。

1・9のときに大きいのはなぜか

考えられる理由の一つは、同じ色の4があると、1の役目が重なることです。

1が手を進めるのは、2か3を引いたときです。ところが同じ色に4があれば、2を引いても3を引いても、4とつながってターツになります。4があると1の受け入れは4と重なるので、1から切る理由ができます。

これに合うかを見るため、配牌で1(または9)が孤立している(同じ色の2・3がない)場面を集めました。その1を最初の数牌として手出しした割合を、同じ色の4があるときとないときで比べています。

配牌で孤立した1・9を持つとき同じ色の4・6がない同じ色の4・6がある
配牌が悪い局(向聴5以上) 40.2%(9,796件) 62.1%(6,069件)
それ以外の局(向聴4以下) 57.4%(37,973件) 71.8%(18,543件)

同じ色の4があると、孤立した1が先に切られやすいという結果でした。受け入れの重なりを避ける切り順と合っていますが、孤立牌の数など、ほかの手牌の構成の影響は分けていません。上がり方は配牌が悪い局のほうが大きく(1.5倍と1.25倍)、孤立牌が多い手ほど「4があるかどうか」で切る牌が決まりやすいのかもしれませんが、これも確かめてはいません。

まとめ

  • 配牌が悪いとき、早く切った数牌の筋を持っていることが多いのは確かでした。ほかの色の同じ数字より18ポイントほど多く持っています。
  • ただし、それはリーグ全体でも見られる傾向で、多井選手の傾向がほかの選手より強いという明確な証拠は得られませんでした。
  • 上乗せが特に大きいのは1・9を早く切ったときの4・6です。同じ色の4があると孤立した1が先に切られやすく、受け入れの重なりを避ける切り順と合っています。

方法と注意

  • 数字は、2018-19シーズンから2026-27シーズン序盤までの全ステージ(レギュラー・セミファイナル・ファイナル)の牌譜1,940半荘から集計しています。多井選手は268半荘です。
  • 向聴数は七対子・国士無双を含めて数えています。
  • 「早く切った数牌」は1〜5打目の最初の手出しの数牌です。字牌を切り続けて5打目までに数牌を手出ししなかった局は含みません。
  • 「筋を持っている」は同じ色の n±3 を1枚以上持っていることで、4・5・6では2種類(例:5なら2と8)のどちらかです。物差しも同じ数字の組で数えています。
  • 90%区間は、半荘を選び直すブートストラップ(4,000回)で求めました。
  • 「ほかの選手」は、ほかの選手の局をまとめた値で、選手ごとの値を同じ重みで平均したものではありません。
  • 牌譜から数えたもので、それぞれの打牌の意図は分かりません。

言葉の意味

向聴数:聴牌まであと何枚か。1向聴は聴牌まであと1枚、5向聴はあと5枚。

手出し:ツモった牌ではなく、もともと手にあった牌を切ること。

筋:同じ色で3つ離れた数字の組(1と4、2と5、3と6、4と7、5と8、6と9)。

90%区間:データのばらつきから求めた、値のありうる範囲の目安。0をまたいでいれば、差は偶然でも起こりうる大きさです。

このコラムに登場する選手:多井隆晴

このコラムに登場する選手:多井隆晴